自分は高校生だった。ありきたりな女子高生。おこづかいは少ないし、スマホは必需品だった普通の女子高生だった。
何だか多数に埋もれてしまうのが嫌で、でも違うのも嫌という複雑さを抱えると無意味に苛立つ日々――――。
それががらりと変わった。
美形ばかりで、みんな優しい。だが、とよぎるのは銀髪だ。筋肉は体を鍛えている証拠で、日焼けもそのせいであろう。身長もあり、凛々しい。
美桜の回りにいる男は、確かに美形だった。アニメや乙ゲーで出てくるような者ばかりだ。王子さまというか、リアルな貴族だったり騎士をしている。十分かっこいい。だが、美桜の回りにいる男たちとはひと味違うのが、彼。
フェルゼン。
ルドルフやザウツは美形であり、来たばかりのころは別に気にしなかった。というより、ルドルフらのことに目が奪われていたと言った方がいい。
だが今は違う。
彼は美桜に近づいてこない。話しかけもしないで、薫の護衛をしていた。みんな自分のところにくるのに、彼だけは黙っていた。だから、気になった。
話しかけてみた。だが彼は聞かれたことにたいして答えるだけ。そっけない。
他とは違うのが美桜の興味をひいた。
まさか、そういうの?つまり、そういうキャラなのだろうか?乙ゲーに必ずいる、ツンデレとか無口とか、そういうの。
異国の留学生という肩書きのフェルゼンが、美桜は欲しかった。
―――落としたい。
どうしたらいいのだろう。悶々としながら、フェルゼンを見かけたら話しかけていたのだがいつしか彼をあまり見かけなくなった。
彼は薫の護衛。まさか薫のせい?能力がないくせに。
あの人はいつも不安そうだった。黙っていた。どうせなら悪役令嬢みたいに苛めてくれたりしないかなも思った。証拠を集めて、糾弾してやれるのに。
きっと、面白い。
一人そんなことを思いながら歩いていると、「あ」と声が出た。

