さよならを告げるまで





 高校生のときと比べて、子供というよりも大人という扱いが多い。お姫様扱いだし、望むことは叶えられる。だが、寂しいと思わないといったら嘘だ。

 たくさんのイケメンがいたとしても、たまにその視線から逃れたくなる。そんなときは気まぐれにふらふらと歩いた。翔は楽しく女の子とやっているのだろう。



 美桜は会いたかった。唯一、自分にとくに靡かなかった男に。



 この国にきてから、夢のようだった。特別な力。それは自分でも驚くような出来事であった。それとともに、西洋人のような男たちがこぞって美桜の側にやって来る。話をしたがるし、世話を焼きたがる。
 今までやってきた乙女ゲームのような状況に、戸惑わなかったといえば嘘になる。美形はある意味で毒だ。酔わされてしまいそうになり、結果、酔った。


 私には、特別な力がある。


 美桜は薫とは違うと認識することで、ほっとした。あの薫という女性をかわいそうだとは思うが、それだけ。
 彼女はそう、美桜という主人公の引き立て役。モブキャラの一人。

 どうせなら流行りの悪役とか、婚約破棄ものとかもいいなと思ったが、あの暗い女のことだから、おとなしいままだろう。


 舞踏会には、様々な国の人がやってきてきた。物語の中や、映画のような光景に胸が踊った。女の子らは可愛く着飾り、男性は凛々しい。
 誰も彼もが美桜と翔に挨拶にきた。まるでお姫様になったかのようだった。

 あの、異国の男の人もまた物珍しくもう少し話していたかったが、宗教が違うとかいうので離されてしまった。のちに竜は邪悪なものです、などと延々と話されたが現実にスフォル…だったか、その国では人を乗せるという。

 見てみたかった。

 翔もまた興味があるらしいが、私らは許可無くしてキリアールを出ることはできない。城も、だ。だが不自由はしていない。ここでは誰もが特別扱いをしてくれるのだから。




 夢のような出来事が過ぎてからは、今度は旅の準備となった。なんでそんな旅に出なくてはいけないのか。

 人々に救いをとかなんとかいっていた。ようは、あれだ。聖女みたいなものかと思った。異世界トリップものでよくあるあれ。聖女ではないものの、特別な力がある。ならば最大限に使って満喫しよう。


 だが、と美桜は足元を見る。