「ですがそれでは、カシェル様の名に傷がつきませんか」

「本当だったら、ね」



 ――――さてさて、どうなる?

 まるで悪役だな、と呆れた顔をしたフェルゼンが思い出される。悪役。悪役だろうが脇役だろうが、なんだっていい。フェルゼンの頼みは叶えてやる。長い友人として。それに楽しんでいた。


 ご婦人方、それからデビューしたばかりなのか若い娘らが何人かで話しかけてくる。和やかに談笑しているカシェルは再び人に呼ばれた。先程の男と、その男よりどうやら身分の高い者らしい男が待っていて、挨拶を交わす。先程の男とは違い、護衛が控えている。


 話は聞いたが、とカシェルは再び同じようなことを説明したのち、契約となる。

 契約はまず、ミオとショウが旅に出たあとに、カオルをつれていくこと。召喚されたことを臥せる、などがある。
 とくに問題はない。

 カオルがスフォルに行くことにも、スフォルの人間になるのも、全く。こちらは問題がない。キリアールはどうかわからないが。


 あの侍女もまたついていくといっていたし、とカシェルは笑顔で契約を交わした。向こうも厄介払いできたたとしてすっきりしただろう。

 これで、召喚された異世界人は二人という記録になる。カオルのことは消えるのだ。



「では、これで」



 こんなに簡単に手放して、後悔するよと思いながら礼をした。