さよならを告げるまで





 フェルゼンから聞いていた通りだ。

 少女、というには大人にも見えるが確かに年齢がよめない。男のほうにいたってもた同じで、貴族らしい格好がなんだか合っていないように見える。ぱっと見ただけでは力があるだなんて思わない。
 せいぜい大体の人が使える簡単な魔術くらいだと思うが、武器を持たせるとばりばり倒すらしい。


 見てみたいな、だなんてカシェルは思う。けれどそれは叶わないだろう。


 カシェルはミオとショウから人が離れた頃、歩みを進める。様々な人と挨拶をして疲れたような顔をしているため、ここはと思う。
 策は、ある。



「お初にお目にかかります、異世界の君。私はスフォルから参りました、カシェル・ルドゥ・アウルダートという者です」



 お逢い出来て光栄、とわざと竜王国式に礼をとる。

 ドレスに身を包んだミオと、貴族の格好をしたショウが興味を示した。今までずっと同じような挨拶と服装ばかりだったから、興味をひくだろうと踏んでいたが、その通りだ。異国からきた貴族は物珍しいのだろう。
 スフォルの貴族服はここではやはり目立ち、男が着飾るのも珍しいはずだ。


 トゥルガイのことも軽く紹介すると「スフォルって…」とミオが聞いた。



「西にある国です。ここでは忌まれますが、竜の国とも言われています」

「竜?」

「ええ。我々は竜を友とし、乗ったり戦うのですよ」

「まじかよ。ドラグーンっていうことか」



 竜はどんな大きさなのか。怖くないのか。誰もが乗れるのか。どんな国なのか。ショウはやはり竜について聞き、ミオはこことは違う竜の住む国を想像しているような顔をしていた。

 純粋な興味だろうが、信仰心のあつい者は眉を潜め嫌な顔をするであろう。が、異世界人には関係ないらしい。

 ショウとミオがさらに聞こうとするのを、遮った人物がいた。タイミングを見計らっていたのだろう。ミオとショウは護衛らしき人物らに連れていかれた。別の挨拶回りか、などと思う。それか、やはり竜を嫌うこの国の者として、竜がいる国にあまり近づかせたくないからか。


 どちらにせよ、まあまあいいだろう。