そんな友人から突然きた手紙に驚くのは仕方ない。ただでさえ身分を多少隠して、学生なんかがやる留学という形をとって行った友人のことは心配していたのだ。

 いざ会ってみると、相変わらずで安心した。が、手を貸せだなんて手紙を寄越すくらい、助けてやりたいらしい女というのは一体何者なのであろう。



「言っておきますが、あまり無茶はしないで下さい。ここは我々には動きにくい」

「まあね」



 青年―――トゥルガイ・クーリッジの言葉にカシェルは否定しない。

 国の規模から見れば、スフォルのほうが大きい。キリアールからしたら竜の国など野蛮、などと思いつつも、繋がりは欲しい。大国との繋がりは時に武器となる。野蛮だろうが味方は多い方がいいということだ。
 


「ですが、あのフェルゼン様を動かす女性というのはどんな人物なのでしょう」

「美人じゃないらしいよ」

「……はっきりいってましたね、フェルゼン様」

「スフォルでそれやったら張り手だね、張り手」

「ここでもそうだと思いますが…」



 カオルはどんな人物か聞いたら、一言。

 美人ではないといった友人に、思わずため息をついたのは仕方がない。それは女性にブスだとかいっているようなのである。他に言い方があるだろ、と文句をたれたカシェルに「事実だが」というものだから呆れた。
 さすがに不味いだろとカシェルは友人の先を思いやる。
 が。



「けど、デレも出たね」

「美人ではないが、笑えば可愛いと思う、でしたか。流石の私も驚きました」

「僕だって驚いたよ。万歳したくなったもの」



 さらりと真面目な顔でそんなことを言うものだから、一瞬トゥルガイもカシェルも絶句したのである。