私はあまりいい学生生活を送ったとはいえない。いじめの経験はあるし、女の子は嘘ばかり。男も頭の中は妙なことでいっぱいで。
人が嫌いだと、思うことがある。今も、この二人が同郷だと思うと気持ち悪い。向こうもまたそう思っているのだろうからお互い様だ。
美桜は黙ったまま、周囲を見ている。フェルゼンが出てこないかと探しているのだろう。
黙って放っておいてくれればいいのに。わざわざ私に来なくても。
「俺らのお陰で生きてられるようなものなんだぞ」
「貴方じゃなくて、この国の人でしょう」
「はっ。俺らは喚ばれた側だぜ?喚ばれてやったんた。違うか」
「…大変ね」
「あ?オマケのくせに意見言うなよ」
「回りに言われるがままよりいいでしょ」
私の反抗に、気に障ったらしい翔が吐き捨てる。
「ってめぇ。殺してやっ」
言葉が切れた。構えた翔の剣が跳ね上がり、宙を舞う。美桜が立つすぐそばの地面に突き刺さったため、美桜がぎょっとした顔をした。
フェルゼンだった。
剣を跳ね上げ飛ばしたのち、翔の刃を首にあてたまま静止。翔の身動きを封じた。
美桜はただただ「フェルゼン、さん」とだけ。私も驚いた。どっからやってきたのだろう。
「カオルもまた、召喚された異世界人であるはず。それを勝手に殺すのは認められていないはずだが」
「わからせてやってたんだよ!邪魔すんな。というか俺にこんなことしていいと思ってんのかよ」
「翔、やめなよ!」
フェルゼンは引かなかった。構えたまま。緊張感を破ったのは「カオルさま!」というニーナの声だ。スカートの
裾を持ち上げて走ってくる。ニーナの抱きつくような抱擁を受け止める。
翔と美桜の二人がいるだけでなんとなく事情を理解したらしい。
その前では「もう戻った方がいい。探していたようだから」とフェルゼンが先に剣をおさめた。翔は体がわずかに揺れ、舌打ち。何も言わずに剣を拾ってから背を向けた。