フェルゼンはいう。ミオに探されるのだと。意味がわからないともらしたフェルゼン。
 美桜に気に入られているのだ、とは言わなかったが頭が痛い。
 一緒にやってきた翔がにやにやとしながら黙っている。何が面白いのか。



「どういうつもりって?」

「フェルゼンさんはどこ」

「さあ」

「あんた…会わせないようにしてるんでしょ」

「どうしてそんなことをしないといけないの」

「護衛だろ。居場所くらい知ってるんじゃねーの」 



 猫かぶりもやめたらしい。呆気に取られるような変貌ぶりだ。どうせ薫だし、という感じか。

 ここにはいないし、どこいったかもわからないとしか言えない。嘘ではない。離宮の外のことなど知らないのだ。フェルゼンがスフォルの友人と会っていることは知っているが、言うつもりはない。

 美桜はあからさまに舌打ちをした。だが「もしかして」という。



「見捨てられたんじゃないの?フェルゼンさんだって、力のあるほうが、私の方がいいに決まってるし」



 だったら何故ここにきたのか。
 わざわざ言いに来たのかと思うような言葉に何だか疲れる。私が不安でいっぱいであるのを知っているのだ。それを言って揺さぶらせて、楽しんでいるのか。それとも美桜も不安なのか。


 無言。どう返してもなにかしら返ってくるだろうから、返さない。

 しかし、本当にヒロインだと思っているのか。乙女ゲームのヒロインだなんて。


 万人に好かれるだなんてあり得ないはず。魔術があるこの世界はどうなのだろう。魔術でどうにかできるのなら、美桜や翔の回りにいるそれらは魔術のせいかもしれない。あるいは、異世界人という肩書きか。キリアールでの儀式文化の、賜物。我が物にしたいと思っているから集まっているではないのか。



 なんにせよ、どうでもよかった。
 翔や美桜のまわりにいる連中は、本当に二人のことが好きで側にいるのだろうか。
 
 

「本当に、オマケだったのね。貴女」



 言葉は刺さる。私は耐えた。