▼8 もう少しの辛抱






 美桜が本性を出した事件(としかいいようがない)から、まだ間もないこのごろ。


 フェルゼンは離宮外で毎回美桜に捕まって大変であるらしいのは聞いていた。よって最近フェルゼンは離宮に閉じ籠ろうとしたものの相手は手強かった。
 美桜はこの離宮にまでフェルゼンに会いに来るのである。



 うまいこと本性を隠してやってくる彼女に凄いなと関心してしまう私をよそに、「会いに来ました」とかなんとか言えるあの根性。言われた側のフェルゼンは呆然とした顔だった。


 閉じ籠ってもやってくるならばとフェルゼンは離宮での閉じ籠りを断念し、ほどほどにしている。でなければもっと酷い(二人でお茶、など)ことになるのを理解したらしい。なんとも言えない顔で「あれはなんだ」と呟いていた。それは私も聞きたい。

 今日は午後、私がのんびり本を読みながらお茶を飲んでいた頃にフェルゼンがやってきた。ニーナにお茶を頼むそれを見守る。


 
「国を出ないか」 

「なに…?」



 離宮からあまり出なくなったフェルゼンの言葉に、私は意味がわからないと聞き返した。



「窮屈なここから、もっと自由に生きたいと思わないか」

「なんの話ですか?」

「だから、キリアールを出ないかという話だ」

「―――出る?私が?」



 本にしおりを挟む前に、パタンと閉じてしまった。ニーナもまたフェルゼンにカップを渡しながら、疑問。


 キリアールを出る?私が?どうやって?何故。


 様々なものが頭を駆け巡る中で「もうひとつ理由がある」とカップに口をつけるフェルゼンに、私はぼうっと見るしかない。



 フェルゼンの話は、こうだ。