私は様々なものを手にとってみたが、何もない。重いとか、軽いとかいうのはあるが、美桜や翔のような違和感――というのだろうか――は全く感じられなかった。武器を前にしてしっくりくることなんてなかった。武器だなんて持つことはない生活をしていたのに、いきなりだなんて無茶な話だ。美桜らが口にしていた、あれ?だなんてこれっぽっちもない。
思えばその時辺りから、私に対する目が違ってきたのだと思う。
また後日、同じようにやってはみたが私は何もなかった。よって先に力を得たのか、あるいはもともと持っていたのかは知らないが、翔と美桜が魔物とやらと戦うのを私は見ることとなった。
私はゲームをする方だし、ライトノベルも読む方だ。だから魔物だなんていう敵はよく出てくるものの、実際目の前にいるのとでは訳が違う。彼らが牙をたてれば人間などすぐ死ぬだろう。見た目もかわいいものじゃない。もっと獰猛で、グロテスクである。
あんなのと、戦えって。
馬鹿じゃないのか。そう思った。
喚ばれた美桜と翔は、馬鹿みたいに戦えた。適当に剣をふれば切れて、フォームなんか無視して矢が放たれる。武士でもあるまいに。普通の高校生だったのではなかったのかという問いは、その本人も思っていたらしい。驚いた顔をしていて、そばで見ていたこの国の者は満足げに頷く。
彼らに一体何があったのだろう。何がどうなってそんなことに?
思いきって聞いてみることにした。
「私にもわからないの。ただ、出来るってわかるというか…」
「俺なんてゲームの真似さえしてりゃなんとかなってるしなぁ。まるでラノベだな」
「そう…」
人に聞いてもわからない、か。同じとは思っていたが、やはりもしかすると同じ日本人でも、世界が違うのかもしれない。私がいた日本と彼らがいた日本が同じとは限らないかも、と理解した。

