そんなカシェルはフェルゼンの友人であり、知己である。よって自由人だろうがなんだろうが、今に始まったことではない。が、久々の友人の話し方にどこかほっとしていた。

 部屋の外には誰かが尋ねてくるかわからないため、カシェルがつれてきた護衛が立っていて、室内にはすでに外に話がもれないよう細工をしているため安全である。



「えっと、なんだっけ」

「お前な」

「怒るなって。えっと、お嫁さんにしたいとかだっけ」

「殴られたいか」

「フェルゼンに殴られたら顔無くなっちゃうって」



 何が面白いのか笑う友人に相談したのが間違いであったか。
 フェルゼンは柔らかなソファーに腰を下ろしながら思う。



「三人のうち、一人が力がないとされたけどっていうのだろ?しかも公にされてないってのがなぁ」

「上の連中は知っているが、離宮は下手に近寄れないようになっている」



 力がない異世界人。
 儀式によって姿を見せる異世界人は何らかの力があるのが普通らしい。故に力がないのは"普通じゃない"のだろう。

 ただでさえ各地に散らばる魔物を退治する力強さを持つはずが、そんなものこれっぽっちもないとなれば…国としては隠したくもなるだろう。頼っているのだから。
 魔物は生身の人間でも倒せるのにね、とカシェルが洩らす通り、魔物は強いが倒せない相手ではない。


 この国では、かつて英雄が人々を救った。英雄は、どこからきたかわからない異世界人。彼の死後、この国では儀式で異世界人を喚んでいる。

 が。

 異世界人はこの世界にいないことはない。どうやってくるのかは謎ばかりであるが、突然やってくるのがほとんどだ。
 何故来るのかだとかはさっぱりであるものの、よって異世界という存在は知られてはいるし、異世界からの人は数こそ少ないが居る。フェルゼンの母国にもカオルとは顔立ちが全然違うが、異世界人は居るのだ。