そして同じようなことが、ミオにも起こっている。
ミオには未婚の男どもがこぞって会いにきているのだ。今はルドルフやザウツが姫を守る騎士として立っているが、彼らも貴族の端くれだそうで、ライバルを蹴落としているのだろう。
よくある話だ。
大貴族となれば、縁談はいくらでもある。これだって同じようなもので、力を引き入れようと必死なのだ。
別にショウやミオに誰が懸想しようがどうでもいい。勝手にやってくれと思う。
厄介なのは。
「フェルゼンさん、やっぱり強いですね!」
ミオがフェルゼンに興味を持っていることである。
ルドルフやザウツがフェルゼンのことを野蛮な国の出身だとか、ああだのこうだの言っていたはずなのだが…。いくらいっても聞かなかったらしい。そこをどうにかしろ、と思わず言いたくなった。
ないがしろにも出来ず「それはどうも」と返した。ミオはへらりと笑って見せる。
相手をしていたショウが「やっぱり体力つけねーとまずいか」などと呟く横に、娘らがああだのこうだのショウを誉めていた。
―――いろんな意味で、悪夢だ。
こんなところより、離宮で昼寝していた方が数倍いい。今ごろカオルは何をしているだろう?
もうすぐ近隣の貴族らを呼んで開かれるお披露目、舞踏会云々は間近に迫っている。よってこの異世界人も、はっきりいってマナーやなにやらやることがあるはずである。が、こんなところにいるのだ。たぶん取り巻きが"お願い"されてしまったのだろう。
遠くから来ているものはすでに到着しているものもいるというから、兵士はとくに熱が入っている。城を歩けば兵士によく会う。

