「フェルゼンはどこにいったんだろ」

「友人に手紙を書くとかいってましたけれど…」



 友人に?となると、母国にだろうか。

 フェルゼンから聞いた、彼の母国。古い歴史のある国。竜がいる大国。
 彼は、竜に乗るのだという。竜騎士でもあるのだと。

 本当にファンタジーな世界だった。ここではリアルで、私が口に出す地球でのことの方が、ニーナらからすればファンタジーであろう。


 私は、匂いも温度も、味も触覚もある。傷つけば血が出る。確かに生きているのだ。


 外国旅行に行ったことがないが、外国は日本とは違う。建物も、人も。それだってまるで異世界のように感じるのではないか。よくテレビでやっているのを見ながら、美しい街並みや見慣れない料理などに興味を覚えていたけれど、実際自分が行って感じるのとでは違う。


 リアルだけれど、なんだか浮わつくこともあった。

 自分は生きているのか、いないのか。いないはずがない。私は女。女は月に生理がある。ここにきて困ったのは生理だ。処理の仕方はニーナに教わった。ここでは日本で売っているような使い捨てのものではなく、布である。吸水性があるもので、使用後は洗うのだ。よってかなりの枚数が必要となる。ニーナは丁寧に教えてくれたし、布ナプキンもまた「ピンからキリまであるのです」といい、私に教えてくれた。
 生きている。


 ニーナがいなくなったら、私は確実に困るだろう。ここから追い出されても、である。何とか生きていく道が欲しい。
 


「ニーナ」

「はい」



 ―――私は侍女。さん付けではなく、呼び捨てでお呼びください。

 あれから彼女は呼び捨てといってきかず、私は折れた。たいして歳が変わらないのに。



「いつもありがとう」



 私にはそれしか言えなかった。