さよならを告げるまで





 突然割れたカップに美桜は驚く。割れたのはカップだけではく、ポットや皿も粉々であった。私のカップは割れていないのに。
 美桜のドレスには紅茶の染みが出来て「なんっ!ちょっと!」と席を立ってドレスを見ている。ニーナが布巾を持って近づくも、「触らないでよっ」と撥ね付けた。私も驚いて立ち上がる。



「あーもう何よ。さいっあく!――――とにかく、邪魔はしないでよね。フェルゼンもルドルフもみーんな私のにしてやるんだからっ」




 また皿が割れた。驚いた美桜が逃げるようにしてその場を後にする。私は席を立ったまま、ドレスが去っていくのを見ていたが、やがて割れた皿やカップを見る。どうして割れたのはだろう。

  ――――もしかして。

 私は自分の割れていないカップに、割れろと思ってみる。…変化はなかった。
 そんな簡単にな、と苦笑し「片付けようか」とニーナにいった。ニーナは布巾を握りしめて「ええ…」と返す。


 怪我をしたらといわれたのだが、私も一緒に片付けたかった。「私、カップ投げてやろうかと思ったの」と皿の破片をとりながらいえば、「貴族の娘で馬鹿にされたりすると、飲み物を相手にかけることがあります」とニーナがいう。日本でもドラマとかで見かけるあれだ。
 
 しかしまあ、かなりの猫かぶりだった。わかっていたけど、素晴らしいものだった。

 誰が味方で、敵なのか。多少はっきりしただろう。



「しかし、何故そうしなかったんです?」

「怒ったりしたら相手の思うつぼかなって。かなり苛々したけど」



 私は口が悪いといったら、悪い方だと思う。腹黒いから。ふざけんなと言うのは簡単だ。けれど、いってしまったら負けだと思ったのだ。しかも相手は高校生なのだから。もっとも今高校生云々なんて役にたたないけれど。