さよならを告げるまで





 旅に出るなら、他にもメンバーがいるはずだ。あのルドルフとかザウツとか。しかし二人だけではないだろう。何たってあの英雄と同じく異世界からの者なのだ。もっと人はいるはずだ、と思いながらどう返したらいいかわからず私は黙った。



「薫さん、ここからどうせ出れないでしょ」

「―――」

「城だし、魔物も入ってこないし。なんなら、私が変わりの兵士をお願いするから」



 どうせ、ときたか。
 ここにいる限り危険なんてないから、護衛なんていらないでしょ。そういうことか。
 不要といったら、そうかもしれない。



「私には決められない」

「………だから言ってるんじゃない」



 小声でそういった美桜が、何だか恐ろしく見えた。私は特別だから黙って従え、とでもいいたげである。

 翔もまた、自分には力があるといって暴走ぎみに見えた。美桜と同じように異性を侍らせているらしい。

 日本では妄想とか、そういうのでおさまっていたものが、ここで自由にやれてしまう。わからなくもない。特別というのは、自分が他とは違うという、心地よさがある。いっしょくたにされず、注目してもらえることの嬉しさがある。

 だとしても、私は美桜と翔と仲良くはなれない。


 
「異世界トリップなんて、夢だと思ってた。妄想とかそういうの。よくあるじゃない。逆ハーレムとか。イケメンに囲まれて愛される話。ああいうのかなって思ってた。なんかの乙女ゲームの話かなとか。よくあるでしょ。転生したーとか。考えてたけどこんな乙女ゲームなんてなかった。まあ、知らないだけかもしれないけど」



 美桜は続けた。
 私も異世界トリップの話とか、そういう小説を読むことはある。だが、と美桜の言葉に何も返さず黙るのがいい選択だと思った。

 ここはゲームでもなんでもない。死んだらそこで終わり。データをロードして、なんていうのはない。


 逆ハーレムは、いいなとおもったことがないわけではない。私だって、複数の人に言い寄られてみたいとか思ったことがある。けれも、実際されたらと考える。本気で自分のことを愛してくれている人が複数いて、選んでくれというのだ。好きな人がいるならまだいい。けれど、いなかったら?みんなを愛するのって、難しいのではないだろうか。
 誰もが、愛した人からの愛を独占したい。自分はその人にとって特別でいたいはず。