さよならを告げるまで




 離宮を散歩し、図書室に籠ったり、庭先でのんびりしたり。そんな日々が私のすべてだった。離宮の外には出られないから。私は読書にあけくれ、ニーナから少しずつ文字を教わった。語学はどうしてこんなに難しいのだろう。
 溜め息をつく。フェルゼンは今ここにはいない。 
 

 だからなのかどうかは知らないが、お客がやってきた。
 薄い緑色のドレスを着た美桜だった。日本ならロリータに入るかもなとか思いながら、椅子に座るようにいった。ニーナは何をしに来たというような顔を必死に押し込めて、紅茶の準備をしている。



「私たち、お披露目なんかが終わればあちこち旅に行くんだって」



 聞いた?といわれても私には関係ないのだろう。力がないから。
 出された紅茶に口をつける。何か言いたげだ。



「それで、その。旅のメンバーにね、薫さんは行けなくて。だから」



 もしかして。
 私は紅茶を出してくれたニーナを見ながら「フェルゼンを連れていきたい、とか」と言ってみる。するとうつむき加減の美桜がばっと顔をあげた。
 ビンゴ。わかりやすい。

 しかし、なんの権限で?

 フェルゼンは離宮の外でよく美桜に会うといっていた。興味なのかどうかわからなかったが、と前に翔とやってきたときの反応を見て、美桜はフェルゼンのことが気になっているらしいことを思ってたのだ。


 乙女ゲームが好きらしい美桜を考えると、まさかハーレムとか考えてないよな?と思ってしまう。ただでさえ美男子ばかりが侍っていると聞いていたのだ。可能性はある。それにフェルゼンだって負けじと美丈夫である。



「フェルゼンにそれを言った方がいいんじゃないかな」

「言ったら、俺はカオルの護衛をしているから無理だって」



 すでに言っていて、断られているのなら何故ここに?
 そんな私に「薫さんから言ってもらえませんか」などととんでもないことを言ってきたため、え、と声がもれた。私から頼めって、どうして私がそんなことをしなくてはならないのか。