火野翔。高校生の十七歳。
もう一人は佐武美桜。
二人が同じ十七歳の高校生ということを知ったなか、偉い人が長々と喋る内容は難しく、上の空だ。それもそうだろう。いきなりこんな世界にやってきて魔物とか言われてもぱっとしない。武器を力をといわれとも何ですかそれとなる。けれど向こうはそんなのお構い無しで、説明を続けた。
―――儀式で喚ばれた異世界人には、特別な力があるのです。
説明の次は場所を移動した。説明をしたものだけではなく、皆が興奮というか、期待しているような空気だった。武器を選んでもらおうだなんて言われても、と美桜は不安そうな顔をして私をちらりと見たが、私は気遣う余裕などない。自分のことで一杯だった。だって、万が一力がなかったら?というより、ただの日本人に力なんてあるわけないじゃないか。そう陰鬱な気分のままついていく。
武器を選んで貰うといっていた言葉の通り、そこには様々なものがある。剣、槍、弓。その他どういう武器なのか、武器には見えないようなものもあって、好きに選んで良いと言われても戸惑うしかない。仕方ないので、それぞれ武器に近づいた。手にとってみた。おもちゃの剣とか、ステッキとかなら子供の頃持っていただろうが、ここにあるのは本物だ。重く、ずっしりしている命を奪うことのできるもの。私には縁がないものばかり。
翔は剣を選んだ。美桜は弓を選んだ。「あれ」から始まり、冗談みたいに振り回したり、弓を構えて見事に矢を射ってみせたりした。なにそれ、と顔がひきつった。
超人?もともと剣道とか弓道とかやってたパターン?
興奮する翔に、やや戸惑う美桜。魔術がこの世界に存在するらしいのは聞いたが、美桜や翔は普通の日本人ではなかったのか?例えば、平行世界とか、そういうの?こんなアニメでよくあることを思う私もどうかと思うが、冗談で片付けられることではない。
これでこの先が決まってしまうのだ。そう思うと怖い。
私、星野薫は何を選んだのか。

