▼6 彼女の本音






 異世界という存在は、こことは違う世界ということで、それは何もひとつではない。いくつも存在しているという。


 儀式を通して、こことは違う世界と繋げて人を喚ぶ。しかし繋ぐさい、どこの世界にというのは決められないため、喚んで姿を見せた人物らは同じ世界から来たとは言えない。そして同じ人種であったりした者であっても、同じ世界からやってきたとは限らない。
 共通する知識の一部がなかったり、あるものがなかったり、と有無があるのは、同じような世界がまたいくつもあるのであろう。自分と同じ自分がいる世界がある、と考えられるが確かめる術はない。



 ―――頭が痛くなりそうである。



 異世界というのは、ここでは妄想とか想像とかではなく、確かにあるものとされてある。
 実際に美桜、翔が異世界から来たのがその証拠である。まあ、ここにある通り私がいた日本と、二人がいた日本と同じかどうかはわからないが。


 いわゆるトリップをしてきた私は、今のところ力とやらがある気配が全くない。

 分厚い本を持ったまま、木陰にいた。気分を変えるために外に本を持ち出して読んでいたのである。
 敷物はニーナが用意してくれたもので、何だか疲れたとそのまま横になる。木の間から青色が少し見える。さらさらと葉か揺れていた。

 ここには誰も来ない。いや、来るとしても限られている。



「大人しいと思ったら、そうでもなさそうだな」



 慌てて体を起こすと、ひなたにフェルゼンがいた。銀色の髪の毛が結わえられ、きらきらしていた。



「この国の女はそんな格好をしない」

「…でしょうね」

「意外にじゃじゃ馬か」

「私は貴族でもなんでもないし、どちらかというとこうしてねっころがっている方がいい」

「女はミオのようにドレスなんかに目がないのだと思っていたが」

「程ほどでいいんです、程ほどで。それに私はあんなの似合わない」

「化粧すれば変わる」

「化粧ね」