さよならを告げるまで





「別にいいけど。俺には関係ねーし。ああでも、美桜はどうだろうな?」

「……」



 知るかそんなこと。
 先に美桜が戻ってしまったため、翔もまた「じゃあな、薫サン」といって背を向けた。ルドルフらと合流。ルドルフが此方を見ていたが、やがて背を向け姿を消した。
とことん気に入らないらしい。


 勝手に見に来て、言いたいこといって。私はただ聞いているだけだった。


 何だか力が抜けて、膝から地面に落ちる。ニーナが「カオル様」とそばによってきた顔は、「あの者らは何なんですっ」と怒っている。一応同じ日本人なはずなんだけとな、と溜め息。


 力があるというのは、ああやって上から目線になってしまうものか。
 はじめからアニメやラノベなどと口にしていたし、美桜は乙女ゲームのことを口に出していた。翔にいたっては俺の時代が、だって。馬鹿じゃないのか。ここは物語の中とでも思っているのか。
 たとえそうだとして、ここにずっと生きていかなくてはならないのだ。あんな調子では、と思っている目の前に手。思わず見比べて、手をとって引っ張られるようにして立ち上がる。

 フェルゼンの手はごつごつしていた。



「カオル」

「なんですか」

「……お前、この国に思い入れがあるか」

「思い入れって」

「離れても別にいいと思うか?」




 手は掴まれたまま。
 問いは難しい。この国に思い入れなんて。私はただ喚ばれて、力がないからとされているだけ。
 フェルゼンの問いの真意はわからない。




「…私が生きていけるならいいかもしれないけど、実際はどうでしょうね。私、知らないことが多いし」

「衣食住がしっかりあれば、問題はないな?」

「え?まあ、そうだろうけど…」

「フェルゼン様、一体何を…?」




 私とニーナの疑問をよそに、鋭い眼光は、翔らが消えた方を見ていた。




「馬鹿にしているのも、今のうちであろう