出身は西にあるスフォル=レンハーザ竜王国。何だか凄い国の名前だが、地球にある国も長い国名があったな、などと思い出した。
留学中っていっても学生というわけではなく、要は学びに来ているらしい。母の母国を見たかったのだという。
お前は、と言われて私は困った。自己紹介。名前を言って、こう書くと見せてみる。
ここの文字は英語やイタリア語とか、そんな感じに見えるがここは異世界。イタリアなんて言う国は存在しない。
この国の文字は、読めて意味がわかっても自分では書けないという、不思議でならないものだった。読むのと書くのは違う。話すのは支障がないという、よくわからない現象。
私が書いた日本語の名前にフェルゼンは「見たことがないな」といい、俺の名前はどう書くんだと聞いた。片仮名で書いてみる。種類が違うなどという鋭い指摘に、日本語の複雑さをなんと説明したらいいのか苦戦した。
まじまじと眺めるフェルゼンの横でニーナが「私はどう書くのです?」と聞いてきたため、ニーナの名前も書いて見せた。
言葉についてはともかく、歳に関しては二人とも沈黙。
何歳かと思っていたら十代だという。苦笑した。翔や美桜は十代だが、といえば「若作りか」といってニーナから冷たい目を向けられ、私もなんといったらいいのかわからず黙った。アメリカ人やフランス人なんかと比べるとアジア人は年齢がわからないというが、と。
沈黙を破ったのはフェルゼンで「すまん」と謝ると、何だかおかしくて笑ってしまった。
女性にむやみに歳を聞くのはここでもあまりよろしくないらしい。
日本人が、欧米人とか西洋人(ここでは通じないので、説明に困った)とは顔立ちが違うことを説明したものの、フェルゼンがなんともいえない顔をしていた。私や美桜らのような顔立ちは多くないという。
他愛のないことが救いになるというのはこのことだ、と思った。

