もちろん、あの場には私がいた。もっとも気絶していたのだが。

 しかし何せ私は力がないと思われているし、実際今のところ何もない。
 フェルゼンにカオルは魔術師かもしれないなどと言われて、はいそうですかーだなんてならない。むしろ、何でそう思ったのか聞きたかった。

 魔術師だとして、それでどうしろというのだろう。呪文唱えて云々なんて、出来る気がしない。それに、今さら…。



 フェルゼンは見返すぞ、といった。
 その言葉は力強くて、思わずぼうっと見てしまった。




「見返すって、どうやって…」



 もし私に力があったなら、今までの行為は私に対する非礼だという。非礼だなんて、と思ったが確かにまわりは冷たくて不安だったのは間違いではない。

 本当は力があるのに、無いとして閉じ込めていた等が知られたら問題になる。ただでさえ、ここしばらく儀式が成功せず異世界人は姿を見せていない。貴重な力ならば尚更、何とか許しを請うてくるだろうという。



「力があるとわかれば掌を返すだろうな」

「……力が目的なのね、やっぱり」



 ありがちな話だ。
 フェルゼンはさらりという言葉は、私だってわかる。その通りだろう。美桜や翔には人が多くついているように、私にも人が寄ってくる。腹の中で何を考えているかわからないような人が。

 彼らにそんなに魅力があるのかというのは疑問だった。やはり異世界人であり力があるというステータスがあるから?よくある、例えば逆ハー云々の得点があるとか?

 まさか。

 そう思ったが、ここは異世界。私のほうが美桜や翔よりも知らないことが多い。もしかすると、あるのかもしれない。
 私に力があって、かしずかれたところで、今更、と思う。