よくあるトリップというそれか、と私は女の子と男の子が賑やかに騒いでいるのを見ながら思った。召喚された人物はもとには戻る方法がないといわれて、戸惑う処か泣き叫んだって可笑しくない。拉致じゃないか、と思った。こちらの意思など無い。
トリップものは嫌いではないし、読んだことはある。けれど、実際はどうだ。不安しかない。だって私は普通の女であり、ただの人間だから。しかも、この人らは何て言った?魔物とか言ってなかったか。戦士ってなんだ。
私の様々な不安と恐怖をよそに、女の子は乙女ゲームかと口にした。乙女ゲームも言ったら様々あるが、イケメンと恋愛するといったものだ。異世界ものもあったな、と女の子の興奮にややひきながら、口を閉じる。そして男の子もまた信じられないような顔をしながら、古典的に頬をつねっていた。異世界かよ、などといいながら俺の時代がきたとあれな発言をしていた。女の子向けのものと違って、いや、同じようなものもあるが、男向けだとただの美人ばかりではない。可愛いくて、胸が大きくてというような女の子ばかりとか、と思い出す。どちらも甘い夢の話。そう、夢の話だ。
のんきだな、と思った。
喚び出されたが、何を言われるかわからないというのに。
私は真っ暗になるような心地を覚えた。喚んだのなら、何かあるのだろう。よくあるじゃないか。魔王を倒せとか、そういうの。だって、昔、異世界からやってきた人物がこの国に貢献して英雄になったというのだ。貢献して、とは何をしたのか。
私も小説やアニメの見すぎだろうかと苦笑した。だが儀式をしたというからには、理由があるはずだ。
喚ばれた人は私を入れて三人だ。