フェルゼンはあの日のことを話した。
カオルは首をふり「あまり覚えていない」と眉尻を下げた。
「あれは多分、魔術だと思う。使える様子はないのか」
「いえ、さっぱり。そもそもどう使うんですか」
「お前の国…世界では魔術は無かったんだったな。ならば使えといって使えるはずがない」
どうやって使うのか。使えるのが普通になっているフェルゼンは、改めてどう使うのかと聞かれると、答えにつまる。カオルからしてみれば使えるということが不思議でならないはずだ。
異世界人だって、普通の人間だろう。
不安は感じるし、楽しければ笑う。
フェルゼンはまだ、カオルの本当の笑みを見ていない。
「見返すぞ」
「え?」
どう、だなんてわからない。フェルゼンも、カオルも。しかしながら、味方が少ないなら、作るしかない。
カオルは悪いことはしていない。放っておくには、何だか気が引けた。下手したら消されかねない。
とある友人の顔が浮かんだ。
―――いつからお世話やきになったんだい?
知るか、とフェルゼンはぬるくなった紅茶を一気に飲み干した。
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