自分達がいたのら城の近くである。呆然としたのはフェルゼンだけではない。ルドルフやザウツもだ。ミオとショウもまた、意味がわからないという顔をしていた。
倒れているのは、意識を失ったカオルだけ。ルドルフもザウツもミオとショウの安全を確認すると、ミオかショウの力によるものだと結論付けたのだ。
何故なら、カオルには力がないから。あるわけがないと決めつけたのだ。
だが―――本当にそうなのだろうか?
フェルゼンの体には、昔の傷はあったとしても、最近のものはない。そう、無いのだ。あの出血もきれいに無い。
あのとき、すまないと思った。連れて逃げてもよかったし、フェルゼンが適当に理由つけて行かせないことも出来たのだ。そうすれば彼女はフェルゼンに謝ることはなかったのではないか。いや、どうだろう。
ルドルフとザウツはミオかショウの力だと結論したが、フェルゼンはもしかすると、と思った。だとしたら、ミオやショウのようになる。それが良いことかどうかはなんとも言えない。
「無事だったんですね。よかった」
離宮に移されたカオルに会いに行ったのは、落ち着いてからのことだった。
控えめな衣服に身を包み、書物を前にしたままそういった彼女は、やはりミオとは違う。ミオはドレスを着てルドルフらと何やら楽しげに話していたが、彼女の顔の笑顔はぎこちない。
どうして彼女だけ…。
「怪我は」
「お前はどこまで覚えている?」
「えっ…?」
椅子に腰かける。ニーナが紅茶と菓子を出し、カオルの側に控えた。ニーナはカオルの侍女としての仕事に不満はないという。むしろ、前の仕事のほうが大変で嫌だったという。カオルは、主として問題ない、と。

