「断っても良かった」



 ある日、ミオがカオルを誘った。森へ行こうというものだ。

 あのとき、ショウもいて、彼らの護衛であるルドルフやザウツとやらもいた。彼女は断ってもよかったのだ。理由など適当につければいい。だが、頷いたそれにフェルゼンは服装の指導をした。彼女は戦えない。ならせめて、怪我をしないようにしなくてはならない。
 


「ごめんなさい」

「…いや、謝ることではない」



 淡々と行動したフェルゼンに、カオルは謝った。ルドルフやザウツの言葉を理解し、悔いているのだ。やはり断るべきだったと。
 それにフェルゼンもまた、断ってもよかったなどとたいして考えもせず言ってしまっている。

 フェルゼン自身、どう接したらいいのかよくわからないものの、彼女が悪いとか、嫌いとか、そんなものは一切抱いていない。むしろ、笑ってもらうにはどうしたら、などと考えてさえいる。


 ミオは魔物を倒す。ショウもまた剣を使い倒していく。
 ザウツの目は、いいだろう?とでもいいたげだった。



 ――――だが。
 カオルは黙っていた。黙って、見ていた。

 
 ミオは自慢するように見せる。ショウはカオルのことなどたいした気にしていなかった。ミオの視線をフェルゼンはふりきるように、カオルに危険が及ばないかと気を配ることに集中する。


 ミオとショウの順調なそれを破壊したのはやはり魔物だった。この辺りにはいないはずの強い魔物だった。
 ショウが飛ばされ、ミオが逃げる。これはと剣を抜いた自分はどうしたらいいか考える。逃げた方がいい。それなのにミオやショウは倒す気でいる。彼らなら倒せるかもしれない。カオルは怯えていた。フェルゼンは魔物の攻撃を受けた。ああ、くそが。


 カオルには魔物が迫り、フェルゼンにもまた牙が突き刺さろうと―――――それなのに。



 気がつけば、場所が変わっていた。
 そうとしか言いようがないほど、鮮やかな変わりようだった。