異世界人はここに来たばかり、戸惑うのは当たり前だ。それを見越して、護衛がつけられる。それは護衛兼教育官のような存在ともいえよう。

 ミオとショウにはルドルフとザウツという男がついている。だが力がない異世界人なんて、ともう一人の異世界人に護衛をやる者は出なかった。昔の英雄のようなことにればと野心が見え隠れしているからこそ、ルドルフやザウツといったそれなりの身分があり、強さもある者が選ばれているのだ。


 結果、力のない異世界人の扱いに困っていた連中は、護衛はフェルゼンに頼んできた。フェルゼンがこの国にいるまでには、何とかするつもりだからと。

 フェルゼン自身、とくに問題はないし、断るには難しいものであったため、とりあえず引き受けた。そして侍女としてニーナという女がつくことになった。

 ニーナはこの国の元貴族らしい。貴族から平民に身を落ちた者であるが故、押し付けられたのだ。
 本人は何を考えているのかわからない、無表情のまま「わかりました」といっていた。



 フェルゼンに任せたのは様子見だ。たまにどんな様子かを報告するくらいの仕事。報告とはいっても、聞かれたことはあまりない。
 考えるとはいっていたが、力がない異世界人にたいした興味がないようだった。
 力のある二人に手をかけるのに忙しいのだろう。



 カオルは普通の女だった。



 ミオもショウもあまり見かけない顔立ちだったが、彼女もまた同じような顔立ちなのは他の二人と変わらない。挨拶を交わして、それだけだ。彼女はミオとは違い、暗い表情のまま。よってさらに愛想がないやら、かわいくないやら言われている始末。

 護衛となってから知ったのは彼女は疲弊していたことだ。体ではない。精神的にだ。

 彼女がいた世界ではごく普通の一般人だったらしいのをフェルゼンは聞いた。