宗教が違うこの国では、竜を嫌う。竜は邪悪な魔物だと。英雄が邪竜を倒したという話は有名なため、さらに竜を恐れて嫌うもは多いのだ。
フェルゼンの国では竜は友人である。
彼らに乗り空を飛ぶし、戦いもするフェルゼンの母国は野蛮、などと思われることも少なくはない。よってフェルゼン自身への扱いもやや冷たいものも含んでいた。
少し前のことだった。
例の邪竜と英雄話に繋がった、異世界人を呼ぶという儀式が行われた。
その儀式とやらが成功し、姿を見せたのは三人の男女。ショウ、ミオ、カオルという名で、女は二人男一人。
儀式で最後に異世界人がやってきたのはずいぶん前らしいため、成功させた連中はかなりの興奮を見せた。王族も、である。
国では魔物に対抗する力はいつだって欲していた。だからこそ、あの英雄のように力を持っているのが普通であるのだと思っていた―――が。
カオルという異世界人は武器を持たせても、とくになにもなかったのである。
ミオやショウはそれぞれ弓を、剣をと選び力を発揮したのに、彼女だけが変化はなかった。
どういうことかと焦ったのは儀式を行った連中だ。今まで儀式で喚ばれた異世界人には力があるというのが常で、無かったという話がないのである。となると今回一人に力がないというのは儀式の不備か失敗かがあったことになってしまう。
とはいえ、一人を除いた残りは力がある。それが儀式に関わったものたちからすると幸いだった。だが彼らは力がない異世界人をどう扱えばいいのか困っている様子だった。

