我ながら甘い。
これでは本当に保護者ではないか。
拉致話が浮上したため、フェルゼンはこのところ忙しかった。家に帰るとソファーで寝ているということも度々あった。
はっとして起きれば、ぬくい。膝掛けがかかっていたそれにカオルかと理解。カオルは自宅待機とカシェルらに言われているはずで、家にいるのは知っている。顔を見たのは少しだけだ。
首都は、女一人でも歩ける安全さとも言われる。が、完全ではない。どこにでも良からぬことを考える愚か者はいる。一人でも減らせたらいい。
そう思っていた矢先のこと。
脳筋ことイーサンが黒髪の弟子を街に一人置いていったなどという話が持ち上がる。確かめると事実であったことに文句を言いにいったのは最近の話だ。
一人きりになったカオルはすぐに団員に声をかけられたのでよかったものの、とその話のあとの訓練は苛立ちが表に出るような激しさでしたねぇ、とのちにアレスにいわれたことに少し冷静になる。
無防備な黒髪の異世界人がいるのを欲しがり、そしてぼろがでる。
入念な準備のあと、フェルゼンは新人とターシャを引き連れて襲撃をかけるべく竜に乗った。
主に動くのは地上のターシャが率いる連中である。その様子を見ながら、新人らをチェックした。
空と地面からには逃れられない。抵抗したもののそれは話にならないもので、新人でも押さえつけられる。なだれ込んだ団員と、包囲を突破するのは難しい。
最後は抵抗していた男へターシャの足蹴り。男は床に沈んだ。
見事な足蹴りに新人は沈黙。
建物には男女の異世界人の姿があった。無事に保護をし、誘拐などをした犯人は移送されるのを見送る。
―――仕事はこんなものだ。
「どうかしましたか」
「いや…ターシャ」
「なんです」
「見事な足蹴りだった」
「!あの、お願いですから鬼畜…じゃなくてルルード副団長には言わないでください。また何を言われるかわかりませんのでっ」
白い息を吐きながらいうターシャにフェルゼンは苦笑を返す。
アレスは優秀な男である。だが、ああ見えて困ることもあるのだ。例えば、このターシャ・アキンラテヴォに、とか。
キリアールに行っている間に何かないのかと思っていたのだが、たいしてかわらないらしい。色々と思うことはあるが、口にしないでおく。
「―――戻るぞ」
そういうと、フェルゼンは空へと飛び立つ。
早くゆっくり出来る休みになれと思いながら。
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