「情報提供だけでいいのだろう。あと変態趣味か」

「異世界人では魔術師とか、新体能力が高いとかそのくらいですし、目につくような者は少ない。この世界の人間とたいした差はないのに危険をおかしてまで捕らえようとするとは―――」



 知らないところで異世界人である彼女も狙われていたと思うと、黙っているには心地が悪い。

 カオル自身、ここスフォルでは異世界人というだけである。が、キリアールの儀式関係者や召喚された二人は彼女のことを知っている。となると「キリアールでは多少有名人となるか」とフェルゼンはいう。
 


「一部の人間にとっては出てこられるとまずいだろう」

「例の二人ですか。是非とも見てみたいですがねぇ」

「やめとけ。気に入られたらどうする」



 フェルゼンがため息をついた。

 キリアールではよく話しかけてきたが、フェルゼンはただ言葉に返すだけであった。興味はあったが、ただそれだけのこと。取り巻きになるつもりはない。


 カシェルからの話だと、旅はちゃんとしているらしい。



 赤色の外套を揺らしながら歩くと、団員とすれ違う。軽く頭を下げるのを受けながらさらに進む。

 騎士団内には地下がある。地下といえばだいたい牢屋なんかがあるものだが、入り口には脱走を防ぐため武装した団員が二人並んでいて、こちらを見るとさらに背筋が延びた。



「団長!」

「 御苦労――――アレス、お前は」

「わかってますよ。お仕置きタイムは団長に譲ります」

「…人をサディストのように言うな」

「ではまた」



 お仕事タイムと言葉は可愛らしいが、やることは尋問と拷問だろう。軽やかにいったそれに武装した団員の顔がひきつるのをよそに、アレスは別の方向へと足を向けた。それを見送らず扉をくぐる。


 地下へとゆっくり降りる。

 騎士団にある地下では一時的に拘束した者を入れておく牢がある。他にも部屋があるのだが、この独特な雰囲気を怖がる者もいるのだ。