フェルゼンは楽しげなアレスをよそに、身なりを整える。ゼレンダール赤竜騎士団の証である赤色は真っ白な雪のなかではかなり目立つだろう。まあ、他にも青色のところもあるから同じようなものだ。

 これから少し用事かあるため、部屋を出る。
 


「異世界人を集めたところで使い物になるんでしょうかね」



 廊下を歩きながら、アレスが辛辣な言葉を吐く。

 異世界人は確かに、この世界とは別の知識を持つだろう。それはフェルゼン自身もカオルと過ごすなかで知っている。

 異世界人はこの世界とは違う独自のものを持つことはある。そのこと事態は珍しいというより、普通のことだ。この世界では普通でも、彼らがいた世界では違うというのが出るのは自然だろう。異世界からやってきているのだから。


 研究者や技術者ならばともかく、一般人独りが何か出来るかといったら難しいだろうが、情報を提供させて、こちらで上手くそれらを利用することは出来る。ようは、こういうものがあるというのを聞いて、それをなんとかこちらでも活かせないかということだ。


 良いものならば、いい。人の役に立つものなら。だがそればかりではないのが現状だ。中には異世界人という肩書きを持つ人を集めたがる者もいる。
 今までそんなことがあったこそ、国は異世界人をある程度調べ、必要とあらば保護をする。


 カオルはキリアールで喚ばれた異世界人だ。いきなり現れるという登場ではなく、儀式で喚ばれた異世界人。
 キリアールでは無能とされていた彼女は今でこそ力があるのだが、スフォルで過ごせるように手を回すのはまあまあな手間がいる。異世界人ではあるが、キリアールの出。異国からのというのもあるからだ。もっともあのカシェルが手際よくやってくれたので面倒は無かったが。



 スフォルではいいとして、キリアールのことはどうか。


 儀式で喚ばれた異世界人は二人ではなく、実はもう一人いたと知られた場合どうなるか。もう一人はどうした、となるだろう。
 キリアール側としては無能とした異世界人を厄介払いしたのだから、死んだとか適当にいうことだろう。
 力がないというよりも、不慮の事故や病だとかいったほうが信じられる。


 彼女がスフォルにいることが知られ、拉致されたといってくるかも知れないが、それはないと踏んでいる。強国であるスフォルに喧嘩を売るような真似はキリアールにはできない。それに三人いたという記録も
消されてなくとも、事実三人いるのはどういうことだと間違いなくもめる。


 顔を覚えている連中こそいるが、どうにでもなる。
 悪役楽しいね!とにこやかにいったカシェルがちらついた。