▼23 早く休みになればいい
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雪が降っている。
雪はあまり降らない、積もらない地域は何故そんなに雪を気にするのかと思うだろう。
それは雪がふることによって問題が出るからだ。
まず、交通機関がマヒすることがある。通路の除雪がままならないと、馬車が通れない。もちろん人もだ。
下手をしたら家の入り口が雪で埋まってしまい出られないとか、屋根に積もりすぎた雪は建物を押し潰すことだってあるのだ。
それから山の方では降り積もった雪が崩れる雪崩の被害も出てくる。
そのため、除雪作業は欠かすことは出来ない。除雪といったら一般的には土や砂を掘ったりするショベルやスコップを大きくしたようなものを使うことが多い。
あとは魔術師や竜が除雪に活躍するのだが――――。
その除雪作業の際に人がとび込んできた。
その人間は怪我を負いながら、騎士団に連絡をとってくれと頼んだらしい。
連絡を受けた団員が話を聞きに行ったのである。
この世界にはときおり、この世界とは別の世界から人がやってくる。やってくるといっても、その自分の意思とは関係ないらしい。どうしてそんなことが起きるのか不明だが、別の世界からやってくる人のことを異世界人、などと称される。
異世界人は、それぞれの文化や言葉を持つ。こことは違う世界からやってきているのだから当然だろう。となると言葉を習う必要があることになるのだが、全く話せず、赤子に教えるような状態の異世界人は少ない。
言葉はだいたい、勝手に降り立った国の言葉を話せるようになっていることが多いのだ。例えばそう、カオルのように。
異なる世界からやってきた人には、ここに来る前の生活があったはず。技術などもそうだ。
スフォルでは異世界人をある程度保護する決まりがある。彼らの持つ技術を悪用するなともっての外。よって良からぬことを考えている者らを取り締まるのだが、除雪作業に飛び込んできた諜報からの話はその連中についてだった。
―――異世界人を拉致している。
「諜報からの話は以上でしたが」
「体は」
「大丈夫ですよ。治療にあたらせていますし、話も出来ますからすぐ復帰するでしょう」
フェルゼンは息を吐く。
このごろまたそんな輩がちらほらと出ていて探らせていたのだ。
こんな早く出てくるとは思わなかった。