「好きかな。絵とかもそうだし、音楽も…でも、そんな詳しくないというか」

「俺も同じようなものだ。チケットこそ貰ったがどうしたものかと迷ったが―――面白かったならよかった」



 ふっと笑うフェルゼンにくらりとした。最近余裕が出てきたからか、なんというか、イケメンさが目についてくる。 

 つい最近会った、フェルゼンの双子の弟フェンデルは顔こそさすが双子というだけあって瓜二つ(といっても、フェルゼンのほうがやや厳つい)なのだが、装飾品をつけていた。ここスフォルでは珍しくないのだが、やはりそこは日本人かつ平々凡々田舎女の私からすると派手で。それなのに似合っているという。


 劇場では、男女の姿が多く見えた。親しげに話す姿は、どんな関係なのかと気にってしまったりするところは、やはり余裕が出てきているのだろう。


 この世界で生きていくことを決めたものの―――色恋は遠い。

 生きていくだけで大変な気がしてならないのだ。今だっていろんな人に助けてもらってばかりで、まだまだ一人でどうこうできることはない。頑張らなくてはと思う。イケメンやっほい、と喜んでなどいられない。


 ―――頑張ろう。
 迎えの馬車に揺られながら、密かに決意した。