私がよく触らせて貰うアッシュは竜だし、魔術師はいる。魔物もいる。

 慣れるしかないのだが、物語の夢を見ているのではないかとも思うのだ。
 長い、夢を。



「ん?ということは有名な話…?」

「始祖の話は、そうだな」

「なら、どうして演劇の内容はあやふやだったんですか」



 有名な始祖の話をもとにしているなら、フェルゼンが前もって知らないのはなんだかおかしい。チケットに書いてたりさしないのだろうか…?
 


「タイトルと絵だけではわからんだろう」



 ―――だそうです。

 人が少なくなったので、席をたつ。はぐれないようにフェルゼンの腕に掴まりながら歩く。

 預けていた外套の釦に苦戦。「子供か」といわれながらフェルゼンに着付けて貰うという失態。仕方ないじゃないか。やたら装飾や釦が多いんだから。



「演劇は好きか」



 迎えの馬車を待っている間に、フェルゼンがそう聞いてくる。