送り迎え付きの弟子なんてどうなのか、と思うものの私一人では邸と街、そして王城内は歩けないというのが本音だった。
一人で生きていくには、世界とか、この国のルールとか、そういうのがまだわからない。お金でさえ、少しずつ習っているため買い物も危うい。
一人というのは実に心細く、そしてどう表したらいいかわからないもどかしさを抱えてしまう。
―――けど。
少しずつ、頑張るしかない。
暗くなった会場は静かになる。近くに座った女性の香水がふわりとかすめていく。
豪奢や幕が上がっていき、セットがあらわとなる。管弦楽団が音を奏で始め、怪しい空気となる。今にも何かやばいものが出てきそうである。
姿を見せたのは、竜だ。
かなりリアル、というか本物かもしれない竜は咆哮する。悲しく、そして怒り、竜は咆哮する。あたりには薄暗く、大地は荒れ果て、殺風景である。悲しげな音楽を背景に、竜は一人そこにいる
そんな殺風景な背景に光が見え始める。女性だ。黒髪は腰まで長く、ゆったりとした服を纏う彼女は竜と会い、竜が吠える。怒りか、悲しみか。だが女性はその竜を癒すように歌う。
すると、どうだろう。
殺風景な光景だったのか、一変。緑が溢れ、のどかな草原となる。
―――雰囲気はオペラ、だろうか。
オペラはテレビでちらっと、ぐらいの知識だし、ここでのそれが同じだとは限らないが、とにかくそんな雰囲気である。
自然豊かとなった場所で、竜の傷は癒されていく。女はその竜とともに緑を増やして歩く。そこで出会う動物らを救いながら。

