「……チケットを貰ったのだ。興味があるか聞いてからのほうが良かったな」
「興味がない訳じゃないですよ。向こうでも、見たことがありますし。といってもドレスをきてくるような感じではありませんけど」
「そうか。だが」
座席数もまた多い。視線をあげると上のほうにもあるらしい。
オペラとかそういうもやるのだろうか。テレビで見た、ああいうのだ。
舞台の下の方には楽器を持った人が席についているのが見えた。私らは舞台からちょうどよく離れたところが指定された席らしい。段差に気を付けながら歩く。
「実は、俺も演目内容をよく知らないのだ」
「えっ」
「恋がどうとかいうのは聞いたが、な」
困った顔をしたフェルゼンとともに席につく。ふかふかな席だ。前の席との幅も窮屈ではなく快適だった。
しかし、恋がテーマとは。一番無縁じゃないか。
演目が知らないなら知らないでいい。「見ていたらわかる」と笑うフェルゼンに私もつられて笑った。
「研究室ではどうだ」
「今はまだ簡単なお手伝いをさせてもらってます。あとは勉強と片付けですかね」
「片付け?ああ、イーサンか。部屋にまで武器を転がしているらしいな」
「ええ。ちょっと危ない気がしますね」
「怪我をしないように気を付けろよ」
フェルゼンは私が正式な弟子となり、たまにイーサンとカシェルの研究室に入っているのを知っている。が、邸までの距離は送り迎え必須、と条件をつけた。
よってたまにカシェルの部下であるトゥルガイや、イーサンの部下のウィリアムが私を送ってくれたり、またシエスが迎えに来てくれたりしているのである。

