――劇場。
あいにく私は、見たことがあるといったら、こんなドレスを来て見るようなものではない。もっと気軽に見れるものだった。そのためちょっと怖い。
「どうした」
「緊張します」
「舞台に出るわけでもなかろうに」
「だって、見てください。ほら、美男美女ばかりですよ!」
ドレス姿が多く見れた。すらりとした美女と、凛々しい美男子。紳士淑女という方々の姿。
私は平々凡々の顔ですみません、という感じである。
「そうか?」
「そうですよ」
フェルゼンはたいした興味がないような顔をしながら、私に「外套を」と。ふわふわがついた外套を脱ぐと、ドレス姿となる。こういう姿が苦手だったりするのだが、仕方ない。
受付に向かうと、フェルゼンがチケットらしきものを渡して、自身の外套と私の外套を預けた。
ああ、なんというか。
赤いカーペットはよく有名人が歩いていたな、などとどうでもいいことを思う。そしてこんなところでヘマは出来ない。ヘマというか、目立つのは…。無理だ。フェルゼンがかっこよすぎる。
人に見られるのがわかる。フェルゼンはイケメンです、隣にいるのが私でごめんなさいといいたくなる。
「あの、フェルゼンさん。どうして劇場に私を誘ったんです?」
劇場というからには、劇が演じられるのだろう。私は全く演目を知らないのだが、それでいいのだろうか?
すると急にフェルゼンが困った顔をした。