上に暫く。降りると窓から青空が見えた。地上からだとかなりの高さではないだろうかと思う。


 広い廊下を歩き、「ここが俺の当てられた部屋」と扉の前で止まる。扉にはイーサン・トロスウェルと書かれていた。
 この扉は普通に開くのか、と室内に入る。室内もまあまあな広さがあり、書物がたくさんある。剣も槍もある。あれ?


 本と武器が乱雑に倒れている中に、人が倒れていないか?

 まさか死んで「ウィリアム、そんなところで寝るな」ないよね、うん。

 どうしたものかと困る私をよそに、ずんずん進むイーサンが「書類より実戦のほうがいいのにな」などといっている。


 ウィリアム、と呼ばれた人は呻いて、はっとしたらしい。

 思いっきり体を起こそうとしてがらがらどさどさ。積んでいた本と、武器がさらに転がり「うわわ」などと言っている。どじっ子…という言葉がふと浮かんだ。もっとも男性のようだが。


 深緑の短髪に、眼鏡姿の魔術師は片付けよりも先に挨拶をすることを決めたらしい。



「トロスウェル卿、おかえりなさい――おや、貴方は」

「俺とカシェルの弟子だ」

「では貴方がカオル・ホシノ殿ですか。初めまして。上級魔術師で、トロスウェル卿の部下をしています、ウィリアム・レンクリフです」

「初めまして」



 ウィリアムは本の下敷きとなっていた外套の裾を引きずりながら立ったため、さらに本が崩れる。もう漫画のような展開である。