「立て。死ぬぞ」
「っ」
「倒せない相手ではないが、厄介だ。適当なところで」
「いい気になるなよ、化け物!」
「ショウ!」
無理やら引っ張られる。その間にも魔物は牙をむく。
翔が再び戦おうとするため、その護衛であるザウツが「ショウ!はやまるな!」と声をあげる。が、冷静さに欠けたショウは話を聞いていない。
新たに出てきた魔物がこちらにやってこようとしている。
――――来ないで。
フェルゼンが私の前に立って切りつけようとしていた。だが魔物は急停止。え、という私をよそに矢と剣。翔と美桜だ。ルドルフもまた尾を切り落としていた。サァァと砂となる。だがまだ本体は生きている。牙。
フェルゼンと離れてしまう。
私は戦えないのか。
使えないオマケなのか。
「っ邪魔!」
「あ」
美桜に突き飛ばされた。地面に倒れこむ。土と草。匂い。鮮明に感じるけれど、私は生きているのだろうかと思った。
オマケなら、死んでもいいだろうなと。戦えない。
「これ、倒せるの!?」
「倒せるに決まってんだろ!俺らは選ばれてるんだからっ」
美桜が泣きそうな顔をしていた。だがぐっと我慢し、弓を構える。
「カオル!早く立て!」
フェルゼンは注意をそらそうとしている。何か言っていた。早く立て。早く。立つって、どんな風にするんだっけ。足がふるえた。膝が笑うというのはこういうことなのだろう。足だけじゃない。体がふるえた。怖い。怖い。怖い!
尾がしなる。ひゅ、と音がした。フェルゼンが転がる。直撃は回避したらしいが、
出血していた。赤色。
どうして。
どうして。
ルドルフとザウツは。翔は。美桜は。私は。オマケ?
――――違う。
私にはなにもないの?オマケの私についているフェルゼンが、怪我をしているのに?なにも出来ない。なにも。
「カオル!」
何かが弾けた。

