よって私はイーサンから紋章の入った短剣を貰っているし、カシェルからは時計を貰っている。何か言われたらこれらを見せればいいとか。


 竜の国は王城も巨大である。宮廷魔術師は王城でも王が住まう所に近い位置に部屋がある。広すぎるため、所々に術で転送されるような細工があるのだそうだ。
 転送装置は厳重な管理がされていて、そこにも兵士が配置されている。私もイーサンとともにそれを使って移動した。


 兵士がいて、侍女らしき者がいて。見かける人はみた品があって、それだけで緊張した。
 イーサンは流石というべきか、とくに気にせず歩いていた。イーサンの背中を追いかけるようにして進むと、途中大きな扉の前でびしりと着込んだ兵士に止められる。


 イーサンは名乗り、続けて私のことは弟子だといった。通せんぼしていた兵士は扉らどいてどうぞと。だがその次が問題で、「初めてだろうから、手を」と言われて掴まれる。と、そのまま「っ!?」めり込んだ――――じゃなくて。



「え?、え?」



 すり抜け、た?

 目の前は、かなり広い。建物で言うなら玄関というような感じで、両側に階段が見える。柱には彫刻が施され、女性や男性がその姿を見せていた。

 人の姿はまばらだ。だが見かける人はびしりとイーサンと同じような格好をしている。



「扉は開くとまた別の場所に通じている―――ここに入れるのは一部だけなのただ」

「へぇ…」

「宮廷魔術師には部屋が与えられる。ようは仕事部屋だ。研究室ともいえる」




 転送される細工といい、自動に上がっていくエレベーター的な(イーサンは昇降機といっていた)のがあったり、驚くのは仕方がない。だって、キリアールとは全然違うから。

 フェルゼンがいう通り、都会であり、進んでいるともいえる。日本、地球と違うのはやはり魔術という存在だったり種族だったりするのだが…。