私を連行したのはニーナで、身だしなみを整えてくれる。軽い化粧のあと、部屋に行くと、イーサンは外套を脱いで待っていた。さらさらな銀髪は低い位置で束ねられている。
ウジェニーがお茶の準備をしているなかで、イーサンの向かいに座る。
お茶が配られ一息つくと「弟子になるにはちょっと色々あるのだ」と話した。
「宮廷魔術師を拝命している俺やカシェルは、弟子にという者はよく来るのだ。学びたいというならばいいが、中には肩書きが欲しいという者もいる。ふるいにかけるのもまた面倒なのだ」
宮廷魔術師は、名前の通り王族直下の魔術師に与えられる肩書きだ。他にも魔術師は城にいるものの、身分は宮廷魔術師の方が上である。なんせ王族の御用達(という言い方をカシェルはしていた)だから。
つまり、エリート魔術師たちというわけで。
実力があり、王族からも認められている魔術師というなら、やはり弟子にしてくれという魔術師も多いらしい。カシェルにもイーサンにも弟子がいるのは知っている。
………ん?
カシェルもイーサンもそんな凄い宮廷魔術師である。改めて、あれと。
「あの、私全然まだ…」
「翻訳術が使えるだろう。あれが使えない魔術師もいる。使えると便利だし、通訳も兼ねられる。いい力だ」
現在私はスフォルで使われている言葉を使っているらしいが、自分では日本語を話しているつもりなのだから、何だか気分的におかしい。
それからたまに通じないことがあるのは、表現などの違いからくるのだと教わった。
カシェルとイーサンの指導により、翻訳術も身に付け始めているのは本当だ。
外国の文字を読み取る、または日本語を変換するのはかなりの力が必要らしく、毎回へろへろになりながら勉強中である。よってまだ完全ではない。
翻訳術で私が扱えるのは、キリアールとスフォルで使われているそれぞれの言葉だけだ。それから、日本語。
「職場に来てみるか?」
「行けるんですか?」
「弟子ならな」
――――それから後日後。
身支度を整えた私は、「かけだしの魔術師」だと言われた。宮廷魔術師になれば制服があるが、弟子はあくまで弟子で服装は決められていない。師匠を証明できるものがあればいいのだという。