魔術師として、まあまあ力の制御が出来はじめてはいるものの、まだまだ足りないということはわかっている。
宮廷魔術師というカシェルは、いわゆるエリートだし有名であろう。本来ならそんな人の弟子を名乗れるような力じゃないと思う。だからこそ、頑張らなければ。
一人で生きていくにも、私は根性なしだし、勇気もない。怖がりで、臆病。そしてどこか人を信じきれない。
雪が降っている。
―――そろそろ戻ろう。
そんな時、深緑の粒が奥に見えた。それは「ケルシュ?」イーサンの竜、ではないだろうか?
黙ったまま様子を見ていると、やはり邸の近くで竜は着地した。慌てて元の道を引き返すと、やはり。イーサンの竜だ。
そして「カオル様!」とシエスと、黒い外套を白くしたイーサンがこちらを向いた。相変わらず美形だが、すでに残念寄りのだということを私は知っている。
「こんな天気に散歩とは。寒かろうに」
確かに寒いが、と苦笑がもれた。
「正式な弟子の身分を得たぞ」
「おめでとうございます、カオル様」
「あの、どういう…」
戸惑う私は、邸側に仁王立ちしているウジェニーとニーナを見た。
「話は室内でしてくださいませんかねぇ。女性を寒空の下におくのはどうかと」
説明しようとしたイーサンがつまる。
――――ウジェニーは最強ではないかと思う瞬間だった。