▼20 宮廷魔術師の弟子






 冬用の外套には裏地に毛皮がはられていてあたたかい。それからマフラーもしている。
 風邪を引いて回復したのだから、ちゃんと体調管理には気を付けなければとつくづく思った。やはり病気はするものじゃない。


 着込むと邸を出る。散歩だ。

 外は雪がちらついている。ニーナに「こんな天気に散歩ですか」といわれたが、だからこそ少し歩きたかった。


 私は地球にいた頃、外国旅行の経験もなければ、外国人と話した経験も少ない。アジア人と西洋人の顔立ちは違う。よってなんというか、気後れしてしまう。びびる、とでもいおうか。

 道を歩いていて外国人を見るというのは田舎で生活してきた私は少なかったし、尚更だ。

 ここでは、今のところ私のようなアジアっぽい人は見ていない。フェルゼン自身はいないわけではないと思うが、と言っていた。私が見てないだけかもしれない。

 とはいえ、異世界というここでは私が異質であり、外国人ともいえる。
 あまり見かけない顔立ちの女、と。



 シエスにつれられて、街に出たことがある。街に巨大だった。全てがひとつの建造物のようだと思った。
 竜が飛び、甲冑姿のものが歩く。馬車が走る。人の顔立ちも違う。西洋人のような顔のなかでは目立つ。昔から人混みが苦手だった私からすると街は何だか恐ろしかった。帰るときになると、馬車で疲れてしまっていたほど。

 都会よりもほとほどの田舎でいい、というのが私だ。大都市は人が多くて、建物が高く圧迫されている感じがしてならない。緑がない。動物がいない。息苦しさ。だから余計疲れやすい。嫌いではないのだが。