「ちょっと!犯罪だよ!少女じゃないか」
身内を犯罪者呼ばわりか。
こちらとカオルを見比べている。
「お前な、少し黙れ。こう見えて彼女は成人を過ぎている」
「え、嘘。まじ?」
ぽかん、としているカオルにはっとする。フェンデルにのまれている場合ではない。
「カオル、こいつは」
「弟のフェンデルです。宜しく」
いつのまに逃れたのか、呆然としているカオルにスフォル式の礼をとる。「ちなみに、双子」と。カオルはカオルで「カオル・ホシノです。どうりでそっくりだと…」などと言っている。
カオルのいた世界にも双子はいるのだな、と少しほっとした。
双子ではあるものの、フェンデルは気さくな性格をしている。いわばカシェルのような。よって今もカオルの手をひいて――――あ?
「おい」
「兄貴、どうした?」
「どうしたもこうしたもあるか。用がすんだら帰れ」
このままだと、カオルにあれこれ聞きかねない。いや、なにもないはずだが…。
「―――はいはいわかった。今日は大人しく帰ることにする」
じゃあまた、とカオルにあっさり挨拶を済ませると、そのまま「ちょっと」とフェルゼンを引っ張っていく。
入れ違いにお茶のセットを持ったシエスが「おや、もうお帰りですかフェンデル坊っちゃん」などという。フェンデルは「兄貴がうるさいからね」と答えていた。
うるさいのは誰のせいだ。

