長兄は母親に似ている。よってやや柔らかい雰囲気を持ち、それでいていい相談相手でもある。彼からは特に言われてはいないが、この弟が厄介であった。
いつか来るのではと思っていたが…。
さてどうしたものか。
「ってことで、会ってくる」
「おい、フェンデル!」
するりと入り口から姿を消した弟に、慌てて席を立ち追いかける。
だが、姿が見えない。何処に行った、苛立ちながらカオルの部屋に向かう途中で「フェンデル!」発見。どこの部屋にいるのか知らないはずだが、勘でも働いているのだろうか。
このままではまずい。
「わかった。わかったから、おとなしく待ってろ。連れてくるから」
「えー」
「考えてみろ。同じ顔がいきなり現れたら驚くだろうが」
「サプライズでいいんじゃ…痛い痛い死ぬ」
「こんなことで死ぬか。大人しく待ってろ」
双子、というのはこのたまにいる存在であるが、カオルの世界ではどうなのかはわからない。双子はあまりよくない、などという国もあるくらいだから、とフェルゼンは慎重にと思っていたのだ。
今までやってきた異世界人の話しだと、双子のことはちらほらあるから気にしすぎかも知れないが。
フェンデルがこちらを見る。
「そんなこといって、実は見せたくないんじゃな―――」
「馬鹿かお前は。だからいってい…」
あ。
二人揃って廊下で大声出していれば、誰だって何だと思うだろう。因みにここはカオルの部屋が近い。となるとカオルが気づくのは仕方がない。
カオルはズボン姿だった。そして伸びた髪の毛をひとつに纏めていて、顔はというと「え」というもの。やらかした、とフェルゼンは思ったが時すでに遅し。
これでは慎重に云々やっていた意味がないではないか。
フェンデルがこちらを見て、叫ぶ。

