フェルゼンは邸の私室で手紙の処理などをしていた。そんな中―――。
「よ、兄貴」
フェルゼンは幻聴か、と思った。
私室の入り口に立つのは、己とそっくりな顔をした男である。細かく見ると多少違うし、髪型なんかも違うから見分けはつく…はず。
フェルゼンはあまり装飾品をつけないが、こちらはスフォルらしく、髪の毛に装飾品がつけられている。
なんとなく、来た理由はわかった。
「顔は出したし説明もしたはずだが」
「セオ兄貴が目を丸くする中で、だったな。俺もびっくりしたけど」
セオ兄貴、というのはフェルゼンの兄のことである。現在はバイロイトにいるのだが…スフォルに帰ってきてから一度会っている。
だから何故、と眉間にしわが寄る。
「兄貴ってば、ちょろっと顔出しただけで帰るし。気になるに決まってるだろ。戻ってきました。キリアールから人をつれてきましたちなみに異世界人、って?情報が足りないって」
キリアールから戻って、事情を説明すべく本邸に行っていた。兄であるセオファンスと、この双子の弟の前でキリアールでのことと、カオルとニーナを連れてきたことを話している。
ああだのこうだの聞いてきていたのは、フェルゼンの双子の弟であるこのフェンデルである。喧しいので無視。
変わりに黙って聞いていた長兄は「お前のことだから、ちゃんとやっているのだろう」というそれに頷いていた。
が。
どんな人物なのか、という手紙は来ていた。それに対して答えてはいたが、とフェルゼンは己と瓜二つの弟に溜め息。

