フェルゼンは騎士団の団長である。責任もあるし、何より強くなければならない。よって自然と指導は厳しくなる。そんな時のフェルゼンがそれはもう酷い顔をしていることは理解しているし、わざわざそんな場所を案内する必要はないだろう―――と思っていたのに。
カオルは騎士団に姿を見せた。
騎士団にやって来たときは驚いた。後でイーサンに文句を言ったが「むさい男に慣れるのも社会勉強だろう」と。
馬鹿かと思った。他にあるだろうにと。
よって騎士団では密かに噂がたっている。アレスが愉快そうに「謎の少女あらわる、ですか」というそれに「面白がってるだろう」と返させば「もちろん」と話していた。
部下のターシャ・アキンラテヴォが胃痛を訴えるような顔をしていた。何とかしてくれということらしいが、無理である。アレスが腹黒なのは今に始まったことではない。
―――雪が降り始めて、少し。
カオルが風邪をひいて寝込んだ、というのを団員を引き連れて魔物討伐に出ていたときに聞いた。医者に見せたところ風邪だと。風邪か。大丈夫なのか。医者に見せたから大丈夫だろうが、どうか。
のちにカシェルが来たとも連絡がはいったものの、街に戻ってすぐ様子を見に邸に戻ったのは記憶に新しい。
泣いていた彼女。
フェルゼンはそれについて何もいなわかった。ひっそりと泣いていたなら、見られたくなかったのだろう。だが、ああやって泣いてるのかと思うと苦しくなる。
今カオルは元気になり、自分の部屋にこもっている。魔術の勉強らしい。フェルゼンは使えるものの、火をつけるとかその程度である。よってカオルの魔術の勉強をみてやることは出来ないのだ。

