▼19 どいつもこいつも
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寒くなると衣替えとなるのだが、そこでカオルやニーナのことが浮かんだ。冬服を買った方が良いだろうとシエスとウジェニーにいっておく。仕立てを呼ぶか、街に連れ出すだろう。
街には必ず、邸の者を連れていくようには言っている。まあ、カオルこそ「迷子になるから一人で行けない」ともらしていたが、それでも言っておいた。
あまり見かけない顔立ちに、興味を持たれても困る。良からぬことをたくらむ者はいないとはいえないのだから。
カシェルにカオルもニーナも妙齢の女。身なりを着飾りたいし出掛けたいでしょう!などと言われ、たまに街や近隣をアッシュに乗って訪れる。が、カオルはまだアッシュに乗るのが苦手らしい。気持ち悪くなりやすい。
前にそれでウジェニーに「坊っちゃん、優しくですよ、優しく!」と言われる始末。
優しくってか、とフェルゼンは悶々としていたのをカオルは知らない。
フェルゼンが邸にいるとき、アッシュもまた同じように敷地内にいる。慣れるには見る、触れるというのが大切であるため、フェルゼンはカオルをアッシュのもとによく連れていくようにしていた。
カオルは竜を見るのが初めてであったし、ニーナもまた恐る恐るだった。が、今はだいぶ慣れたらしく、自分からアッシュに触れるまでになっている。
アッシュもアッシュで覚えたため、カオルやニーナに黙って触られている――どころか顔をすり寄せていた。
カオルは少しずつ、慣れていった。
魔術はカシェルとイーサンが師となり教えて、世間のことなんかはウジェニーらが教えている。フェルゼンは邸にいるときは付き合おうと思っているが、キリアールでの過ごした日々の代償は仕事の多さとなって跳ね返っているため、忙しい身だった。
休みとなり帰ってくると、邸にいない。フェルゼンの邸の敷地は広い。魔物避けをしてるので魔物は出ないだろうが、どこに行ったのか心配になる。
探しにいこうかっていうときに、ひょっこり出てくるのだ。おかえりなさい、だなんていいながら。
何処にいた、などと心配していたフェルゼンをよそに。