「カオル、俺は―――お前のことを邪魔だとか面倒だとか、思っていないからな。お前は俺が知ってる女より変わってるが、いや、変わってるというか、面白いというか、楽というか―――ああくそ。よく言えない。一応、誉めてるんだぞ」



 誉めてるんですか、といってみる。声はかなり掠れて酷い有り様だ。だがフェルゼンは聞こえたらしく「嫌だったら側に居させないだろうが」という。

 顔を少し出してみる。
 フェルゼンがあ、という顔をする。



「酷い顔をして―――おい、枕を投げるな」



 誰のせいだ、と文句を言いたくなった。


 フェルゼンが枕を戻しながら部屋を出ていくのをちょっと顔を出して見送る。熱のせいなのか、照れなのかどうかわからないが、顔が熱くてたまらなかった。


 フェルゼンのせいだ。

 私は恥ずかしさと照れが入り交じってどうしようもなくて、しばらく布団に潜っていた。