相変わらず喉はやられ、声がかすれてしまうため無理に喋るのを禁止されているし、熱もまだある。体は重い。
 ふと寝返りをうつと、涙が流れた。うつらうつらと微睡む。その間に、ふと影が落ちたのを感じた。



「泣いているのか」



 うっすらあけた目があった。慌てて布団で顔を埋めたが、「考えていたが」とフェルゼンは静かにいう。

 いつ戻ってきたのだろう。



「向こうの世界に、親や友人がいただろう。こことそちらの世界はどれだけの違いがあるのか、俺はわからないが…苦しかったんじゃないのか。お前が口に出す以上に、本当は」



 弱音なんて、いくらでも吐きたかった。けど吐いてどうなるというのだ。そうやって押し込めた。

 私という存在が、あの地球から消えたのだろうけれど、私が居たという事実は記憶となってそこにあるのか…わからない。わからないことだらけだ。


 会えないことは、辛い。
 私は別に親との関係に悩んでいたわけではない。離れてはいたけれど。



 今まで培ってきたものは、向こうにしかない。ここでは新たなものは作れるだろうが、あくまで新しいもの。地球での私の友人だったり両親だったりとの思い出は更新されることはない。


 一人ぼっちなのだ。
 それが、たまにぐっとくる。


 いつか平気になるだろうか。
 異世界人がときおりやってくるという、この世界。異世界人のことを考えてくれる人は、居る。

 フェルゼンやカシェルらのように。