▼18 風邪をひくと弱くなる
「風邪ですね」
医者らしき人物がそういったのが聞こえたが、何だか遠かった。
体調が悪いなと思っていたら、次の日体を起こせなかった。重く怠く、視界がぐるりと反転しそうになるので目を閉じる。頭に響く鈍い痛みが走り、自分でもこれはちょっとな、と思った。
こちらにきて体調管理はある程度していたつもりなのだが、悪くなるときは悪くなる。
ベッドから体を起こせず、起きてくる時間になっても姿が見えないとウジェニーが様子を見にきて発覚、慌てて医者が呼ばれたのである。
ウジェニーとニーナが控えていて、医者からの指示を聞いていた。
医者は部屋を出ていく。
視界がぐるぐると回っているような感覚で、しかも喉がやられてしまっているため、声が出ない。そのため会話は身ぶり手振りだったり、筆記だったりするのだが―――後者はまだ翻訳術がうまく使いこなせないのと、無駄に体力(魔術を使うのは体力も消耗するらしい)を使わせないと、ウジェニーとニーナがせっせと私の世話を焼いているため私がすることは大人しくしてるくらいだ。
彼女らは人の世話をするプロである。さすがというしかない。
ちなみに今、肌触りのかなりいいワンピースのようなパジャマ(?)を着ている。可愛らしいそれにやや抵抗があったが、声が出ないのでなにもいえないままだった。
まあ、いいか。
そうして重い瞼が閉じる。
目が覚めたら、額にはひんやりとした何かか額にのせられていて、ベッドの横にある棚にはいつでも飲めるように水が置かれていた。
人の姿はない。目だけがぐるぐると動く。
しかしまあ、風邪か。