アレス自身はまだまだやれる顔をしているため、魔王が鼻唄混じりに倒そうとしてきた勇者とその他をやっつけた図のようにターシャの脳内に絵が浮かび、消えた。



「あ、いいえなんでも」

「私に言えないことですかそうですかー」

「嫌がらせはやめてください」

「どうせ噂でも聞いたのでしょう、団長の」

「!」

「図星でしたか」



 この鬼畜上司めっ…!

 わかっていて聞いてきているそれに、諦めて認める。知ってますかとダメもとで聞いてみると「知りたいですか」と。

 副団長でもあるなら、知っているのだろう―――。



「残念。教えません」

「どうしてです」



 どう返ってくるかはなんとなくわかったものの、一応聞いてみた。



「面白いので」



 何が教えません、だ。性格が絶滅してるアレスに聞くのが間違いだと思った。この人よりまだフェルゼンのほうが話がわかってくれる。

 まあ、聞くのには勇気が必要だが。



「あの、団長ともあろうものが少女とデートはまずいのでは…」

「まずいですねぇ」

「…ほんとに不味いと思ってますか。楽しんでませんか」

「貴方が失恋してやけ酒したあれといい勝負かもしれませんからね」

「っ!」


 ―――前の話だ。



 ターシャは恋人がいたのだが、恋人の浮気が発覚。ターシャは相手をぼこぼこにした後、やけ酒をしたのである。同僚が慰める横で、べろんべろんになったターシャは何をやらかしたのか―――思い出したくもないあれを、鬼畜上司は知っているのである。